会社員や学生アルバイトのように給与を1か所から受けていて、副業でVTuberをしている場合、確定申告が必要になる目安は「給与以外の所得が年20万円を超えるかどうか」です。ここでいう所得は、スパチャや広告の受取額ではなく、そこから必要経費を引いた後の金額です(出典: 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)。
もう1つ気をつけたいのが、古い解説記事の数字です。「専業なら所得48万円まで申告不要」という説明を見かけますが、48万円は令和7年度税制改正より前の基礎控除の額です。執筆時点(2026年10月)では基礎控除が見直されているので、古い数字をそのまま当てはめないでください(出典: 国税庁 No.1199 基礎控除、令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について)。
この記事は税理士の監修を受けたものではありません。国税庁が公開している情報をもとに、申告が要るかどうかを自分で確かめる手順をまとめています。最終的な判断は、国税庁のページか税務署、税理士に確認してください。
VTuberの確定申告はいくらから必要?立場別の目安
申告が必要かどうかは、まず「給与をもらっているか」で分かれます。国税庁の説明をもとに、VTuberに多い立場を表にしました。
| 立場 | 確定申告が必要になる目安 | 国税庁の出典 |
|---|---|---|
| 給与を1か所から受けている(会社員・学生アルバイトなど) | 給与と退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合 | No.1900 |
| 給与を2か所以上から受けている | 年末調整されなかった給与の収入と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合 | No.1900 |
| 給与がなく配信などの収入だけ(専業) | 20万円の基準は使わない。所得の合計が所得控除の合計を上回り、税額が出るかどうかで判断 | No.2020 |
専業の判定は、所得控除(基礎控除など)の額によって変わります。基礎控除の額は年分や所得の金額で違うため、この記事では金額を書きません。申告する年分の数字を国税庁 No.2020 確定申告と No.1199 で確認してください。
「20万円以下なら何もしなくていい」とも言い切れません。国税庁は、給与以外の所得が20万円以下で申告不要の人でも、医療費控除などで還付申告をするときは、その所得も含めて申告する必要があると案内しています(出典: 国税庁 No.1900 関連Q&A)。また、住民税は所得税とは別の税で、市区町村が扱います。所得税の申告が不要でも住民税の手続きが要るかは、お住まいの市区町村に確認してください。
スパチャ・広告収入は「収入」、判定は経費を引いた「所得」
スパチャ、メンバーシップ、広告収入、案件の報酬など、配信で入ったお金はまず「収入」として合計します。20万円の判定に使うのは、その収入から必要経費を引いた「所得」です。国税庁も、20万円の判定は収入金額から必要経費を差し引いた後の金額で行うと説明しています(出典: No.1900)。
スパチャそのものを名指しして所得区分を示した国税庁のページは、本記事の調べた範囲では見当たりませんでした。副業の配信で得た所得は、多くの場合「事業所得」か「業務に係る雑所得」のどちらかとして扱われます。国税庁は業務に係る雑所得を、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの、と説明しています(出典: 国税庁 No.1500 雑所得)。どちらに当たるかは次の節の基準で判断します。
収入の記録は、プラットフォームの収益画面や入金明細から月ごとに残しておくと、年明けに集計しやすくなります。VTuberの収入がどのくらい人によって違うかは、VTuberの収入の現実をまとめた記事で扱っています。
何が経費になる?国税庁のルールでVTuberの支出を考える
国税庁は、必要経費を「売上原価など収入に直接要した費用」と「販売費や一般管理費など業務上の費用」に分けて説明しています。計上する年は、お金を払った年ではなく、その年の12月31日までに債務が確定したかどうかで決まります(出典: 国税庁 No.2210 必要経費の知識)。
VTuberの支出で迷いやすいのは、私生活と配信の両方で使うものです。自宅の家賃や通信費、普段も使うPCなどは「家事関連費」と呼ばれ、業務に直接必要な部分を明らかに区分できる場合に限って、その部分が経費になるとされています(出典: No.2210)。配信用に依頼したLive2Dモデルや立ち絵、配信専用に買ったマイクのように、配信のための支出であることを説明できるものは、領収書や請求書を残しておくのが前提です。モデル依頼の価格帯はLive2D依頼の相場で扱っています。
高額な機材は、買った年に全額を経費にできるとは限りません。国税庁の説明では、使用可能期間が1年未満のものか取得価額が10万円未満のものは、使い始めた年に全額を必要経費にできます。それ以外は原則として減価償却で複数年に分けます(出典: 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし)。PCや高価なカメラを買うときは、この区分を確認してから記録してください。
事業所得か雑所得か、帳簿はどこまで残すか
国税庁の通達では、事業所得か業務に係る雑所得かは、その活動が社会通念上「事業」と呼べる程度の規模かどうかで判定するとされています。また、取引を記録した帳簿書類を保存していない場合は、原則として業務に係る雑所得に当たるという扱いも示されています(出典: 国税庁 所得税基本通達 法第35条《雑所得》関係)。
業務に係る雑所得の場合、記録まわりで国税庁が示している主なルールは次の3つです(出典: No.1500)。
- 前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、現金預金取引等関係書類を5年間保存する必要がある
- 前々年分の収入金額が300万円以下なら、一定の手続きのもとで、実際に受け取った・支払った時点で計上する現金主義を選べる
- 前々年分の収入金額が1,000万円を超える人は、確定申告の際に収支内訳書などの添付が求められる
配信を事業として続けるなら、開業届や青色申告という選択肢もあります。提出期限や要件は手続きごとに決まっているので、国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出などとNo.2070 青色申告制度を読んでから決めると安全です。なお国税庁の説明では、青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得がある人です。
申告の時期と、迷ったときの確認先
確定申告の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までです。期限が土日祝日に当たる年は日付がずれるので、申告する年の案内で確認してください(出典: No.2020)。
申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に沿って作れます。区分や経費の判断に迷ったら、国税庁の税務相談チャットボットや所轄の税務署、税理士に相談してください。ネットの解説記事は、書かれた年によって基礎控除などの数字が古いことがあります。この記事も含め、数字は国税庁のページで申告する年分のものを確かめてください。
確定申告の書類には本名や住所を書きます。活動名と本名をつなげる情報の扱いは、VTuberの身バレ対策で確認しておくと安心です。
今日やること1つ
今日は、今年1月から今日までの配信収入と、配信のために払ったお金を表計算ソフトに書き出してください。収入から経費を引いた所得が20万円に近いかどうかが分かれば、申告が必要か、何を国税庁のページで確かめればいいかが決まります。
デビュー準備の全体像はVTuberデビューの手順と費用にまとめています。
