個人勢VTuberの切り抜きガイドラインは、「対象範囲」「許可の方式」「収益化の可否」「表記ルール」「禁止事項」「削除と連絡先」の6項目を決めて、チャンネル概要欄かXの固定ポストに置けば作れます。
大手事務所のガイドラインを読み比べる記事は多いのですが、個人が自分用にどう書けばいいかの文例はあまり見かけません。この記事では、公開されている事務所の規定とYouTubeの収益化ポリシーを下敷きに、そのまま書き換えて使えるひな形まで示します。
規約の内容は執筆時点(2026年10月)に公式ページで確認できた範囲で書いています。法的な判断が必要な場面は、専門家への相談を前提にしてください。
VTuberの切り抜きガイドラインに書く6つの項目
切り抜き動画は、配信の一部を第三者が編集して投稿するものです。ルールが何も示されていないと、ファンは「やっていいのか」が分からず手を出しません。逆に、なんでも許すと書いてしまうと、意図と違う編集をされたときに止める根拠がなくなります。ガイドラインは、この両方を防ぐための「先に出しておく約束」です。
| 項目 | 決めること | 個人勢の書き方の例 |
|---|---|---|
| 対象範囲 | どの配信・動画を切り抜いてよいか | YouTubeの公開アーカイブのみ。メンバー限定は対象外 |
| 許可の方式 | 自由/事前登録/個別許可のどれにするか | 申請不要。ただしフォームかDMで連絡をもらえると助かる |
| 収益化 | 切り抜きで広告収益を得てよいか | 可。ただしYouTubeの規約を守ることが前提 |
| 表記ルール | 元配信URL・タイトル・チャンネル名の記載 | 概要欄の最初に元配信のURLとタイトルを書く |
| 禁止事項 | 誤解を招く編集、刺激的なサムネイルなど | 発言の意図を変える編集、本人を貶める加工は禁止 |
| 削除と連絡先 | 違反時の対応と問い合わせ窓口 | 削除依頼には速やかに対応。窓口はXのDM |
表の右列はあくまで一例です。どこを緩くし、どこを厳しくするかは活動方針で変わります。次の章で、実際の事務所がどう決めているかを見ておきます。
大手事務所の切り抜きガイドラインから分かること
個人で書くときの参考になるのは、運営会社が公開している二次創作ガイドラインです。ここでは、内容を公式ページで確認できた2社を取り上げます。
ホロライブプロダクションを運営するカバー株式会社は、二次創作ガイドラインの中で切り抜き動画の規定を設けています。概要欄の冒頭に元の配信・動画のURLとタイトルを記載すること、元の配信が終わってアーカイブが公開される前には投稿しないことが求められています。メンバーシップ限定などの有料コンテンツは、事前の許可がない限り対象外です。切り抜き動画をコンテンツIDなどの自動識別の仕組みに自分の著作物として登録することも禁止されています。一方で、ガイドラインを守り、投稿先の規約や第三者の権利を侵さないことを条件に、広告収益を含む収益化機能を使えるとしています(出典: ホロライブプロダクション 二次創作ガイドライン、hololive GUIDELINES(英語版))。
にじさんじを運営するANYCOLOR株式会社は、二次創作ガイドラインの第5条で切り抜き動画を定めています。制作・投稿の前に「切り抜きチャンネル登録用フォーム」への登録を求め、概要欄など分かりやすい場所に元の配信やアーカイブのURLを貼ることを求めています。また、発言や映像の一部をトリミングしたり、文字や音声を足したりして誤解を生む編集や、配信の本意から離れた刺激的なサムネイルを禁じています。違反と判断した動画には削除を依頼し、連絡を受けたら直ちに対応するよう求めています(出典: ANYCOLOR二次創作ガイドライン、切り抜きチャンネルの連絡先登録フォーム開設のお知らせ)。
2社に共通するのは、元配信への導線を必ず残させること、そして本人の意図をねじ曲げる編集をはっきり禁じていることです。個人勢がガイドラインを作るときも、この2点は外さないほうが安全です。登録制にするかどうかは、運用の手間と相談して決めれば足ります。
切り抜きの許可範囲の決め方
許可範囲で迷うのは「どの配信を対象にするか」と「申請を求めるか」の2つです。
対象については、メンバーシップ限定配信や有料イベントの映像を外すのが基本になります。お金を払った人だけが見られる内容が無料で出回ると、支援してくれた人に申し訳が立たないからです。歌枠も慎重に扱ってください。歌っている楽曲には作詞者・作曲者などの権利があり、配信者本人の許可だけでは足りない場合があります。ゲーム配信も同じで、映像の扱いはゲーム会社のガイドラインに従う必要があります。ガイドラインには「第三者の権利がある素材は、その権利者の規約に従うこと」と一文入れておくと誤解が減ります。
申請の方式は、次の3段階から選ぶと考えやすくなります。
- 申請不要(自由): ルールを守れば誰でも切り抜ける。数を増やしたい初期向き
- 事前登録制: フォームやDMでチャンネルを届け出てもらう。違反時に連絡がつく
- 個別許可制: 1本ずつ確認してから投稿してもらう。手間が大きく、個人では回しにくい
デビュー直後は切り抜きを作ってくれる人自体が少ないので、1か2から始めるのが現実的です。ANYCOLORの登録フォームのように「登録は制作の許諾を保証するものではない」と添えておけば、登録した人の動画でも違反があれば削除を依頼できます。
もう一つ、身バレにつながる場面の扱いも決めておきましょう。配信中にうっかり映った通知や生活音の部分が、切り抜きで広がると取り消せません。「配信者が非公開にした部分、本人がアーカイブから削除した部分は切り抜かない」と書いておくと安心です。身バレ対策そのものはVTuberの身バレ・顔バレを防ぐ設定と習慣にまとめています。
切り抜きの収益化を許可するときの決め方
収益化を認めるかどうかは、切り抜く側にとって一番気になる項目です。ここは曖昧にせず、「可」「不可」「条件付きで可」のどれかを明記してください。
収益化を認めれば、切り抜きを作る動機が強くなり、本数が増えやすくなります。認めない場合は、純粋なファン活動としての切り抜きだけが残ります。カバー株式会社は条件付きで収益化を認めている例です。個人で始める段階では、条件を細かく付けるより「可」か「不可」のどちらかにしておくほうが、確認の手間が少なく運用は楽です。
注意したいのは、配信者が許可しても、YouTube側で収益化が認められるとは限らない点です。YouTubeのチャンネル収益化ポリシーには「再利用されたコンテンツ」という項目があります。他のクリエイターの映像に編集や解説、ストーリーを加えたものは対象になり得る一方、独自の解説や実質的な変更がほとんどない使い回しは収益化の対象外とされています。許可を得ていても、付加価値がなければ対象外になる例も示されています。判断はチャンネル全体で行われることがあります(出典: YouTube ヘルプ「YouTube のチャンネル収益化ポリシー」)。
なお、YouTubeは2025年7月15日に「繰り返しの多いコンテンツ」のポリシーを「inauthentic content(オーセンティックでないコンテンツ)」に改名しました。同じ告知の中で、切り抜きやコンピレーション、リアクション動画を扱う再利用コンテンツのポリシーには変更がないと明記しています(出典: YouTube Help “YouTube channel monetization policies”)。
この事情はガイドラインにも書いておくと親切です。「収益化は可。ただし審査はYouTubeが行うため、収益化が通るかどうかは保証しません」と一文あれば、後から「許可されたのに収益化できなかった」と言われることを防げます。字幕や見どころの解説を足すなど、元配信に価値を足した切り抜きを歓迎すると書くのも一つの方法です。
そのまま使える切り抜きガイドラインの書き方(文例)
ここまでの項目を、個人勢向けの文例にまとめました。【】の部分を自分の方針に合わせて書き換えてください。この文例は法的な効力を保証するものではありません。
【チャンネル名】切り抜き動画ガイドライン(最終更新: 【日付】)
1. 対象 YouTubeで公開している配信アーカイブと動画を対象とします。メンバーシップ限定の配信・動画、有料イベントの映像、本人がアーカイブから削除した部分は対象外です。
2. 申請 【申請は不要です/事前に【フォームURL・XのDM】からチャンネル名とURLをお知らせください】。登録は個別の動画の許可を保証するものではありません。
3. 収益化 【収益化してかまいません/収益化はご遠慮ください】。収益化の審査は各プラットフォームが行うため、収益化できることは保証しません。
4. 表記 概要欄の最初に、元配信のタイトルとURL、【チャンネル名】のチャンネルURLを記載してください。配信が終わり、アーカイブが公開されてから投稿してください。
5. 禁止事項 発言の一部を切り取ったり文字や音声を足したりして、本来の意図と違う印象を与える編集はしないでください。配信内容と関係のない刺激的なサムネイルやタイトル、本人や他の配信者を貶める内容も禁止です。切り抜き動画をコンテンツIDなどに自分の著作物として登録することもご遠慮ください。
6. 第三者の権利 ゲーム映像、楽曲、コラボ相手の発言や映像には、それぞれの権利者のガイドラインが適用されます。各ガイドラインもあわせて守ってください。
7. 削除と連絡先 本ガイドラインに反すると判断した動画には、削除をお願いすることがあります。連絡を受けた場合は速やかに対応してください。お問い合わせは【連絡先】まで。本ガイドラインは予告なく改定することがあります。
コラボ配信は特に揉めやすいところです。自分のガイドラインで許可しても、相手の発言や映像は相手のルールに従う必要があります。コラボを受ける前に、お互いの切り抜きルールを一言確認しておくと後で困りません。
ガイドラインの置き場所と運用のしかた
書き上げたら、見つけてもらえる場所に置くことが大切です。YouTubeのチャンネル概要欄にリンクか全文を載せ、Xのプロフィールか固定ポストにも同じリンクを置くのが基本です。ブログやnoteなど、全文を1ページにまとめられる場所があれば、そのURLを各所から張ると更新が一度で済みます。
改定するときは、冒頭の「最終更新日」を必ず書き換えてください。いつのルールで作られた動画かが分かれば、古い動画に後から文句をつけることを避けられます。禁止事項を追加したときは、Xで一度告知しておくと切り抜き師にも伝わります。
自分で切り抜きやショート動画を作る場合も、このガイドラインが基準になります。公式の切り抜きを自分で出すと、ファンが作るときの見本にもなります。スマホで編集を始めるなら、スマホで使える動画編集アプリの記事でアプリの選び方をまとめています。
今日やること: 収益化と申請の2項目だけ先に決める
ガイドラインは一度に完成させなくてもかまいません。今日は「収益化を認めるか」と「申請を求めるか」の2つだけ決めて、上の文例の2と3を埋めてください。この2項目が分かるだけで、切り抜きを作りたい人は動けるようになります。残りの項目は、文例をほぼそのまま使っても成り立ちます。
デビュー準備の全体の流れはVTuberデビューの手順をまとめた記事で確認できます。モデルを動かして配信を始めるところからなら、VTube Studioの使い方も参考にしてください。

