PCで配信するなら、まず無料で試せるソフト型(Voicemod の無料版か VCClient)から入り、OBS に「変換後の声」が届くかを確かめてから有料版や機材を考えるのが遠回りしない順番です。
ボイスチェンジャーのおすすめを並べた記事は多いのですが、スマホ配信ではPC用ソフトの声がそのまま配信アプリに届かないことや、変換した声を配信ソフトへ通す経路まで書いた記事はほとんどありません。
この記事では、執筆時点(2026年10月)で公式情報を確認できた5つの候補を比べ、PCとスマホそれぞれで「声が配信に乗るまで」の道筋と、両声類という別の選択肢までまとめます。
ボイスチェンジャーおすすめPCソフト・機材の比較表(執筆時点 2026年10月)
ボイスチェンジャーは大きく分けて、PCで動くソフト型と、マイクとPC・スマホの間に挟む機材型があります。表の情報は各社の公式サイト・公式ヘルプで確認できた範囲です。価格は変わりやすいので、確認できなかった金額は書いていません。
| 候補 | 種類 | 対応環境 | 料金の形 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| Voicemod | PCソフト(AIボイスあり) | Windows 10/11(64bit)、macOS Ventura 13 以降 | 無料版あり。PRO は月額・年額・買い切りから選択 | まず無料で配信に乗せてみたい人 |
| VCClient(w-okada) | PCソフト(AI声質変換) | Windows、Mac(M1)、Linux | GitHub で公開 | 自然な声質変換を試したい人。GPUがあると有利 |
| MorphVOX Pro | PCソフト(エフェクト型) | Windows(Mac 版は別製品) | 買い切り。無料体験あり(7日間は Mac 版ページの記載) | AIを使わず軽く動かしたい人 |
| Roland VT-4 | 機材(ボイス・トランスフォーマー) | PCとUSB接続でオーディオIFとして動作 | 本体購入 | PCの負荷を増やしたくない人 |
| Voicemod Key Pocket(VMKey Pocket) | 機材+スマホアプリ | USB-C の iPhone(iOS 16 以降)、Android 10 以降 | 本体購入(PRO 体験つき) | スマホやゲーム機でボイチェンを使いたい人 |
出典: Voicemod 動作環境、Voicemod PRO の購入方法、w-okada/voice-changer(GitHub)、MorphVOX Pro 公式、Roland VT-4 公式、Voicemod Key Pocket 公式
各候補の特徴と注意点
Voicemod:無料で試せて、配信ソフトに通す手順が公式にある
Voicemod は Windows と Mac で動くボイスチェンジャーです。公式ヘルプによると、Windows は 10(ビルド1607以降)か 11 の 64bit 版が対象で、32bit 版は使えません。Mac は macOS Ventura 13 以降が必要です(出典: Voicemod’s system requirements)。
同じページには、CPU が AVX2 という命令セットに対応している必要があると書かれています。Windows では AVX2 がないと AI ボイスが使えません。古いPCを使う人は、インストール前にCPUの型番で確認しておくと安心です。
無料版で使えるボイスは日替わりの一部だけで、PRO にするとボイスがすべて開放されます。サウンドボードも無料版は1つまでです(出典: Voicemod Features: Free vs. PRO)。PRO は月額・年額・買い切りから選ぶ形で、金額はアプリ内か購入ページで表示されます。
配信で使うときは、Voicemod が作る仮想マイク「Voicemod Virtual Audio Device」を OBS の音声入力キャプチャで選びます(出典: How to use Voicemod with AVerMedia Nexus)。アプリを閉じると仮想マイクに音が流れなくなる点と、スピーカーだとハウリングしやすいのでヘッドホンを使う点も公式に書かれています(出典: Setting up Voicemod)。
VCClient:AI で声質そのものを変える。GPU と遅延の調整が前提
VCClient は w-okada 氏が GitHub で公開しているリアルタイムボイスチェンジャーです。README によると、std 版は Windows・Mac(M1)・Linux で Beatrice に対応し、cuda 版は Windows で Beatrice と RVC、onnx 版は Windows と Mac(M1)で Beatrice と RVC に対応します(出典: w-okada/voice-changer)。cuda は NVIDIA の GPU 向けの仕組みです。公式チュートリアルでは、AMD の GPU は ONNX モデルでのみ有効とされています。
Voicemod のような「声のプリセット」とは違い、変換先の声のモデルを読み込んで声質を寄せる方式です。そのぶん、モデルの扱いには注意が要ります。README には、配布されているサンプル音声ごとに利用規約があり、声質変換したことを明記するといった条件が並んでいます。他人の声を無断で学習したモデルは使わない、と最初に決めておきましょう。
遅延についてはチュートリアルに説明があります。声を出してから変換されるまでの遅れは「buf と res の合計」で、一度に切り出す長さ(CHUNK)を大きくすると処理は安定しますが遅れは伸びます。音が途切れるときは CHUNK を上げる、という調整の方向も示されています(出典: VCClient RVC チュートリアル)。また開発元はソフトに署名しておらず、実行は自己責任と明記しています。
MorphVOX Pro:AI を使わない昔ながらのエフェクト型
MorphVOX Pro は Screaming Bee 社のボイスチェンジャーです。AI で声質を学習させる方式ではなく、用意された声のエフェクトをかけて声を変える方式です(出典: MorphVOX Pro)。Mac 版は「MorphVOX Mac」という別製品で、公式ページには7日間の無料体験と、サブスクリプションではなく買い切りであることが書かれています(出典: MorphVOX Mac)。
注意したいのは、公式の動作環境ページが古いことです。確認できた要件は Vista から Windows 10 までで、Windows 11 の記載は見つかりませんでした(出典: MorphVOX Pro – Getting Started)。購入前に無料体験で、自分の環境と OBS で動くかを確かめてください。
Roland VT-4:PC の負荷を増やさない機材型
VT-4 は Roland のボイス・トランスフォーマーです。公式サイトでは、ストリーミング配信やポッドキャスト、ゲームチャットの声にリアルタイムでエフェクトをかける使い方が紹介されています(出典: Roland VT-4)。
取扱説明書によると、パソコンと USB でつなぐと USB オーディオ・インターフェースとして動き、電源は USB バス電源か単3電池4本です(出典: VT-4 取扱説明書(PDF))。コンデンサーマイクを使う場合は前面の[PHANTOM]スイッチをオンにします(出典: Roland サポート)。
変換を機材側でするので、ゲームや Live2D のトラッキングで PC が手一杯でも負荷が増えません。一方で、取扱説明書で確認できた接続先はパソコンで、iPhone や iPad に直接つなぐ方法は公式資料では見つかりませんでした。スマホ配信用として買うのは避けたほうが無難です。
Voicemod Key Pocket:スマホとゲーム機向けの小さな機材
Voicemod Key Pocket はスマホに USB-C でつなぐ小型の機材です。Voicemod Key Pocket がスマホのマイクとして振る舞い、Voicemod のスマホアプリが声を変換します。必要なのは iOS 16 以降か Android 10 以降で、ヘッドセットの接続が必須です。スマホ本体のマイクとスピーカーには対応していません(出典: Voicemod Key Pocket)。Lightning 端子だけの iPhone は対象外と販売ページの比較表にあります(出典: Voicemod Key Pocket – Founders Edition)。
ボイチェンの声を配信に通す経路(PC・スマホ別)
ボイスチェンジャー選びでつまずきやすいのは、ソフトの性能よりも「変換した声が配信に届かない」ことです。PCとスマホで仕組みが違うので、分けて見ていきます。
PC配信:仮想マイクを OBS で選ぶ
PC のソフト型ボイチェンは、変換後の声を「仮想マイク」として出します。配信ソフト側でその仮想マイクを選べば、視聴者には変換後の声が届きます。OBS なら次の順番で確認できます。
- ボイスチェンジャーのアプリを起動し、入力に実際のマイクを選ぶ。
- OBS で「ソース」の「+」から「音声入力キャプチャ」を追加し、デバイスにボイチェンの仮想マイクを選ぶ。
- OBS の「音声ミキサー」に元のマイクも入っていたら、そちらはミュートにする。地声と変換後の声が二重に流れるのを防ぐため。
- 録画を数十秒回して聞き直し、変換後の声だけが入っているか確かめる。
VCClient のように仮想マイクを自前で持たないソフトは、ソフトの出力先に仮想オーディオデバイス(VB-CABLE など)を選べば、OBS の音声入力キャプチャでそのデバイスを指定して拾えます。VB-CABLE は、入力された音をそのまま出力に流す仮想デバイスで、Windows と macOS 向けがドネーションウェアとして配布されています(出典: VB-Audio Virtual Cable)。OBS の音声まわりの基本は OBSの使い方 にまとめています。
機材型の VT-4 は、それ自体がオーディオ・インターフェースになるので、OBS では VT-4 をマイクとして選ぶだけです。手持ちのオーディオインターフェースとの役割分担に迷ったら オーディオインターフェースの解説 も参考にしてください。
スマホ配信(IRIAM など):ソフトだけでは他のアプリに声が渡らない
スマホでは、Voicemod のスマホアプリを入れても、その声を IRIAM などの配信アプリへ渡せるとは限りません。Voicemod 自身が、スマホやゲーム機はマイクと1つのアプリが直接やりとりする作りで、そのために外付けの Voicemod Key Pocket で経路をつくると説明しています(出典: Voicemod Key Pocket)。
IRIAM のアプリ内にボイスチェンジャー機能があるかは、執筆時点で公式情報を確認できませんでした。スマホでボイチェン配信をしたい場合は、外付け機材をスマホのマイクとして認識させる形になります。配信アプリが外付けマイクを受け付けるかは、アプリや端末の組み合わせで変わります。購入前に返品条件を確かめ、届いたらまずテスト配信で声が乗るかを確認してください。IRIAM で配信を始めるときに揃える機材は IRIAMのボイチェンと配信機材の記事 にまとめています。
PCがあるなら、PC で変換して PC から配信するほうが経路は単純です。スマホ配信にこだわる理由が特にないなら、ボイチェンを使う時点で PC 配信に寄せることも検討してみてください。
ボイスチェンジャーの選び方:遅延・PC負荷・用途で決める
比較表の候補から1つに絞るときは、次の3つを順番に見ると迷いにくくなります。
- 遅延:自分の声が遅れて返ってくると話しにくくなります。AI 型は設定で遅れが変わるので、雑談配信なら短めに、歌枠は避けるなど用途で割り切ります。
- PC負荷:ゲーム・トラッキング・OBS・ボイチェンを同時に動かすと処理が足りなくなることがあります。余裕がなければエフェクト型か機材型にします。
- 用途:視聴者に「かわいい声」として聞かせたいのか、身元を隠すために声を変えたいのかで、必要な自然さが違います。
遅延とPC負荷は、カタログを読むより自分のPCで試すほうが早く分かります。Voicemod の無料版や VCClient は費用をかけずに試せるので、配信と同じ状態(ゲームやトラッキングを起動したまま)で10分ほど話して録画し、声の途切れや遅れを聞き直してください。
用途の面では、身バレ対策としてボイチェンを考えている人も多いはずです。ボイチェンは声の印象を変えますが、話し方の癖や口ぐせまでは変わりません。声バレを含めた対策は VTuberの身バレ対策 で整理しています。
もう一つ見落としやすいのがマイクです。ボイチェンは入ってきた音を加工するので、雑音や反響が多いと変換後の声も崩れやすくなります。ソフトを替える前にマイクの位置や種類を見直す価値はあります。マイク選びは 配信用マイクの選び方 を見てください。
両声類VTuberという選択肢とボイチェンの組み合わせ
両声類は、男性の声と女性の声のように、2つの声を自分の発声で出し分ける人を指す言葉です。VTuber でも、ボイチェンを使わず地声と作った声を使い分ける人がいます。
機械を通さないので、遅延や PC 負荷、配信アプリとの相性を気にしなくて済むのが利点です。その代わり、声を作るための練習が必要で、喉の疲れ方も人によって違います。長時間配信が多い人ほど、無理のない声の高さを探すことが先になります。
両方を組み合わせる考え方もあります。作った声をベースに、ボイチェンの効果は弱めにかけて少しだけ寄せるといった使い方です。変換を弱くするほど、声の不自然さや遅れも目立ちにくくなります。最初から「ボイチェンか両声類か」を決めなくても、まずボイチェンで声のイメージを固め、あとから発声練習で近づけていく順番もあり得ます。
どちらを選ぶにしても、デビュー前に声の方向性を決めておくと、キャラクター設定や立ち絵の依頼とも食い違いが出にくくなります。デビューまでの全体の流れは VTuberデビューの手順 で確認できます。
今日やること:無料版で「変換後の声」を録画して聞く
今日やることは1つです。Voicemod の無料版か VCClient を入れ、OBS で仮想マイクを選び、30秒だけ録画して聞き直してください。変換後の声だけが入っていて、遅れが気にならなければ、そのソフトで配信を始められます。途切れや遅れが気になったら、設定を調整するか、エフェクト型・機材型へ切り替える判断材料になります。
マイクやオーディオインターフェースを含めた機材全体の揃え方は、VTuber・配信者の機材ガイド にまとめています。ボイチェンだけ先に買い足す前に、手持ちの機材で足りるかを一度見ておくと出費を抑えられます。

